研修の概要
札幌弁護士会館において、肺血栓塞栓症に関する研修が行われました。発表担当者は原琢磨会員でした。
原会員からの詳細な事例報告の後、医療の専門家による解説がなされました。解説の中では、そもそも医師が「患者がどのような病気か」を判断する際の、判断枠組みに関する詳細な説明がなされました。
研修の概要
札幌弁護士会館において、医療問題弁護団・研究会の全国交流集会の報告が行われました。報告担当者は、古宮靖子会員でした。
報告の概要
各地の医療問題弁護団が、全国から集まって、様々な意見交換が行われました。
特に本年度は、@法的責任の根拠としての診療ガイドライン、A医療訴訟における専門委員制度、B静脈注射時の神経損傷、に関して、重点的な研究報告がなされました。
各地の弁護団の経験や意見が活発に交換され、より充実した知見を獲得することができました。
研修の概要
札幌弁護士会館において、医療問題に対する経験交流会を行いました。発表担当者は、田端綾子会員と木下尊氏会員でした。
意見の概要
医療問題の内、どのような問題について、どのような解決を目指していくのか等に関し、それぞれの会員の具体的な経験を交換し合いました。
研修の概要
札幌弁護士会館において、神経損傷事案に関する研修を行いました。発表担当者は、
鈴木賢治会員、
橋場弘之会員、
菅沼雄一郎会員でした。
当該事故の概要
それぞれの会員が担当した神経損傷事案に関し、紛争解決の経過を発表し、損傷部位による過失の認定傾向の違い、解決内容の違い等について様々な意見交換を行いました。
概要
2019年10月12日(土)に医療事故全国一斉相談受付を実施します。
電話受付時間は、午前10時〜午後3時までです。
当研究会を含め、全国55か所に電話受付窓口を設置して、各地域の弁護士が医療事故の相談を受け付けます。
必要に応じて、後日、弁護士による面談での法律相談を実施します。
なお、当日は法律相談の受付を行うものであり、電話口でのご相談に対応するものではございませんので、予めご了承ください。
医療事故に遭った(その可能性がある)患者さんやご家族で、相談先を探しておられる方々に法律相談のきっかけをご提供するとともに、医療事故調査制度の運用実態の把握の契機とできればと考えております。
ご自身やご家族等が医療事故に遭われた(その可能性がある)と思われている方は、下記当会の電話受付窓口までお電話ください。
電話番号 011-218-7061
受付時間 午前10時〜午後3時まで
研修の概要
教育文化会館において、医師をお招きして、内視鏡による手術に関する研修を行いました。発表担当者は、田端綾子会員と塚越朱美会員でした。
当該事故の概要
内視鏡を用いて、嗅神経芽腫の摘出手術した際に、血管を傷つけてしまったことで大量出血をきたして、結果的に後遺障害を負った事案でした。
研修では、手術映像を検討しつつ、嗅神経に関する基礎的な知識を確認しました。嗅神経芽腫はとても珍しい疾患で、中々症例にあたることも少ないとのことでしたが、これを機に嗅神経がどのように走行しているのかを詳しく学ぶことができました。
研修の概要
札幌弁護士会館において、医師をお招きして、動脈血液ガス分析検査に関する研修を行いました。発表担当者は、齋藤健太郎会員と原琢磨会員でした。
当該事故の概要
動脈血液ガス分析検査(血液ガス分析、血ガス分析などとも呼ばれます)とは、動脈血を少量採取して、その動脈血中の酸素分圧や二酸化炭素分圧(炭酸ガス分圧)、pHの値の3項目を測定する検査で(実際にはその3項目以外も調べることもあります)、その検査結果とその結果から推計される値によって、呼吸状態と酸塩基平衡を調べることができます。
研修では、呼吸や酸塩基平衡に関する基礎医学、臨床医学について学び、実際の症例での検査値の持つ意味等について考えました。
研修の概要
札幌教育文化会館にて、平成29年10月に東京で開催された「第38回医療問題弁護団・研究会全国交流集会」の研究内容を会内で検討する研修を行いました。発表担当者は、原琢磨会員でした。
当該事故の概要
「医療問題弁護団・研究会全国交流集会」とは、患者側の立場で全国各地の医療問題弁護団・研究会が年に1回、集まり、医療訴訟に関する裁判例の研究報告や医師の講演を通じて、研鑽を積んでいます。当研究会も交流集会に参加しており、その内容をできる限り共有するようにしています。
交流集会1日目には、『高齢者の身体機能の低下と高齢者医療』と題し、医師の講演と裁判例の検討を行いました。医師からは高齢者に生じる廃用症候群の解説と、各種器官に生じる高齢者特有の問題点の説明を受けました。例えば、高齢者はそうでない人と比べて転倒等により骨折が生じやすいのですが、高齢者の骨折の特徴や高齢者が骨粗鬆症になるメカニズムが紹介されました。また、担当の弁護団からは、高齢者特有の医療リスクに関する老年医学の知見を整理するとともに、高齢者の手術適応・検査に関する裁判例、投薬管理に関する裁判例を検討しました。
交流集会2日目には、医師の問診義務違反に関する裁判例の研究報告が行われました。「問診」とは、医師が患者や家族に対して質問して患者の状態を把握することで、診察やその後につながる重要な診療行為です。医師が適切に問診をしていれば鑑別に必要な情報が得られて、早期に治療を開始することができたという場合には、医師の問診義務違反が問題になる場合があります。また、治療の一環として薬剤等を投与するときに、副作用の観点から投与してはならない患者に投与しないように問診を通じて確認するべきなのにそれを怠って薬剤等を投与したというときにも、医師の問診義務義務違反が問題になる場合があります。診療科目ごとにこれまでの問診義務違反に関する裁判例を検討しました。
研修の概要
当該事件の概要、並びに医療過誤訴訟に関連する本件麻酔手技と事故発生の機序、過失についての検討がなされました。
当該事故の概要
全身麻酔には、麻酔科医が最も怖れるCVCI(Cannot ventilate Cannot intubate)という事故があります。全身麻酔が施行されると、患者は意識を喪失し、自然呼吸が停止するので人工呼吸を施すこととなります。このときの最も確実な人工呼吸は、気管チューブを気管内に挿入して気道(空気の通り道)を形成し、これを麻酔機に結合して患者の呼吸を確保するというものです。
本件は、全身麻酔施行により患者の意識を喪失させるも、気管チューブ挿入がかなわず、患者が自発呼吸不可能状態にあって、挿管不可能、人工呼吸不能の事態が発生したCVCI症例でした。
この場合の患者の最後の救済手段としては、時機に遅れることなく(低酸素脳症は、4〜5分で不可逆化する)外科的気道確保(輪状甲状膜又は気管穿刺・切開)が必要となりますが、本件ではこれに遅れ、患者の一命は取り留めたものの、不可逆的低酸素脳症によってこれを植物化したものです。
本研修の内容
上記事故発生の原因と機序、過失を理解するための麻酔(全身麻酔、部分麻酔、両者の併合麻酔)の原理と各手技の解説が行われました。
また、ミニトラック、ラリンジアマスク等、呼吸確保機材の解説も行われました。
そして、本件に於ける過失の検討が行われました。
一般に医療過誤訴訟では、通常の医療水準に達している施術か否かによって、過失の存否が検討されるべきです。しかし、裁判所の過失認定に関する一般的傾向は、当該医療行為に不注意(おなかにガーゼを忘れたなど)があったか否かという、古典的過失観念に偏っているように思われます。
本件は「重度リュウマチによる頸椎変形を予測すべき」という、かなり大きな過失ファクターがありましたが、それでもなお裁判所は、過失認定に躊躇する印象を受けました。
同種事案では、かなり粗末な麻酔手技でも、裁判では、不注意なし、過失なしという場面が予想されるので、主張・立証にそれなりの工夫が必要です。
概要
平成29年6月27日午後6時より、札幌弁護士会会館において、医療過誤訴訟における法律構成に関する論文の検討をテーマとする研修会が行われました。
医療過誤訴訟において医療機関の責任が認められるためには、学説において様々な議論がありますが、患者側で@医師の過失、A患者の生命・身体といった権利の侵害、B過失と権利侵害との因果関係、C損害、といった要件を主張・立証して、裁判所に認めてもらう必要があります。
私たち研究会の会員も、訴訟等において、日々こういった要件の主張や立証を行っています。
今回の研修では、裁判官が公刊した論文をもとに、改めて医療過誤訴訟においてどのように要件を主張していくべきか、法律論について議論を重ね、会員同士で法律知識や主張の仕方についての研鑽を行いました。
概要
平成29年2月28日午後6時より、札幌弁護士会会館において、医療事故調査制度、美容医療等をテーマとする研修会が行われました。
今後、例えば入院中の突然死の事例のような医療機関で起きた患者さんの死亡に関して、医療事故調査制度の利用が見込まれます。
医療事故調査制度というのは、医療機関で患者が死亡する医療事故が発生した場合、医療事故調査・支援センターに報告し、その医療機関または同センターにおいて院内事故調査を行うという制度です。
平成28年10月末時点までの累計で報告された医療事故報告件数は423件でした。概ね月30数件ペースとされています。
医療事故調査制度の適用があった場合には、患者のご家族は医療機関から調査結果等が報告されるほか、調査結果が納得できない場合には、直接第三者機関への調査を求めることができるようになりました。
他方で、死亡事故の全件が制度の対象になるものではないことや、調査の説明方法などにも問題があります。
医療機関でご家族が亡くなられたという場合には、医療事故調査制度のご利用を検討されるとともに、問題点もある制度であるので、弁護士へのご相談もご検討ください。
概要
平成28年12月13日午後6時より、札幌弁護士会会館において、医療事故調査制度等をテーマとした研修会が行われました。
今回の研修は、発足して1年をむかえた医療事故調査制度についての研修でした。
会員より医療事故調査制度に関する全国の実情や統計を紹介するとともに、現場の医師をお招きして、死因究明に関する実情や問題点について議論しました。
概要
平成28年10月29日土曜日に、全国一斉医療電話相談が行われました。
当研究会からは、7名の弁護士が参加しました。
概要
平成28年8月30日午後6時より、札幌弁護士会館において、介護事故に関して近時発表された論文を題材にして、介護事故をテーマとした平成28年度第5回研修会が行われました。
介護施設の数、介護施設を利用される利用者数は飛躍的に増加しており、それに伴って介護施設内の事故や介護中の事故も増加し、介護事故訴訟は増加傾向にあります。
例えば介護施設内で生活されている利用者さんが急変した場合や、介護施設内で転倒してその後治療が遅れた場合など、介護事故は医療事故としての側面があります。近時、法律雑誌に介護事故に関して裁判例の傾向を検討する論文が複数発表されたことから、これらの論文を題材として本研究会でも会員による検討会を行いました。
介護事故は、病院内での事故と同様に、実際に利用者さんの身に何が起きたのか家族からはわかりにくく、また医学的知見や介護に関する知識が求められる分野です。
介護事故の分野についても本研究会では研修を行っていきたいと考えています。
概要
平成28年7月25日午後6時より、札幌弁護士会館において、呼吸器科の基礎的な医学的知識の習得をテーマとした平成28年度第4回研修会が行われました。
研修では、医学生や看護師などの医療関係を志す方々が勉強のために見ているビデオ教材を使って、呼吸器科に関する基礎的な医学的知識に関する勉強会を行いました。
網羅的な教材ではありませんでしたが、書籍だけではなかなか理解できないところについてビジュアルを通じて感得することができました。
当研究会では、以前にも医師をお招きして基礎医学講座を実施しており、基礎的な医学的知識についても研修をしてきております。
概要
平成28年6月28日午後5時より、札幌弁護士会館において「肺血栓塞栓症」などを主要なテーマとした、平成28年度第3回研修会が行われました。
発表担当者は原琢磨会員でした。
研修会では、発表担当者から、肺血栓塞栓症を中心として循環器、呼吸器に関する基本的な医学的知見の報告を行うとともに、肺血栓塞栓症に関する医療過誤訴訟で問題となりやすい法的論点に関する検討を行いました。
研修会では医師から、肺血栓塞栓症に関する医学的知見の解説なども受けました。
肺血栓塞栓症とは
「エコノミークラス症候群」という病気をご存知でしょうか?
エコノミークラス症候群は、長時間のフライトが原因で生じた急性肺血栓塞栓症のことです。
肺血栓塞栓症とは、足の静脈などで血流が停滞すると血液の固まり(血栓(けっせん))ができ、その血栓が血流に乗って肺まで運ばれて、肺の血管を詰まらせてしまう病気で、死を招く重大な病気です。
日本でも1980年代から90年代以降に肺血栓塞栓症の患者が急激に増加し、また先ほどのエコノミークラス症候群が知られるようになったことから、この病気がクローズアップされるようになりました。
肺血栓塞栓症は、他の病気での治療や手術、入院の際に発症しやすいことが知られています。
典型的には入院中、ずっと横になっていた患者さんが歩行やトイレのために立った際に血栓が肺まで飛んで発症するといったケースです。このため、肺血栓塞栓症をめぐる訴訟も数多く起きています。肺血栓塞栓症は、胸痛の「キラーディジーズ」の一つとよばれ、胸痛を訴える患者さんがいた場合に医師が決して見落としてはいけないとされている病気です。
肺血栓塞栓症は予防方法があり、また発症しても早期発見により救命できる病気です。肺血栓塞栓症による死亡事故が起きないように、訴訟を通じて医療機関に対して警鐘を鳴らしていきたいと考えています。
概要
平成28年3月29日午後5時より、札幌弁護士会館にて、脳神経外科の事案を題材とした研修会が行われました。
発表担当者は、川島英雄弁護士でした。
今回の事案はまだ訴訟係属中の事案であるため、現時点では詳細な内容は紹介できないのですが、研修会では、発表担当者による脳外科手術の基本的な医学知見の解説、現在の訴訟での中心的争点の紹介や、現在の訴訟方針等についての説明が行なわれました。
協力医師からも、脳や頭の構造や、脳外科手術の基本事項についての解説がなされました。
基本的医学知識確認の重要性
今回の研修では、最先端の医療を議論するというよりも、脳や頭蓋骨の解剖、血管の走行など、医学の基本知識を再確認する研修となりました。
最先端の医療を研究することも必要かもしれませんが、今回のように、医学部生も学ぶような基本事項を再確認するということも、医療事故を取り扱う弁護士にとってはとても大事なことであると再確認しました。
医療事件を比較的多く取り扱う弁護士といえども、医学的知識は医師にはかないませんが、訴訟案件であれば、訴訟戦略や立証方針については、非常に様々な意見が出され、活発な議論が行われます。
このような形で意見交換することで、この事案の訴訟進行に有益となるだけでなく、 当研究会メンバーが今後取り扱う事案においても、とても有益な研修となります。
今後も研究会メンバーで協力し合いながら、研鑽を続けたいと思います。
概要
この研修では、@平成27年11月6日、7日に開催された「第37回医療問題弁護団・研究会全国交流集会」の報告と、A同年10月6日に開催された札幌地方裁判所の医療集中部(民事第2部)との「医療訴訟実務協議会」の報告が行なわれました。
医療問題弁護団・研究会全国交流集会
@の集会は、全国各地の医療問題弁護団・研究会が年に1回一堂に会して開催している集会です。患者側の立場で医療訴訟に関わっている弁護団・研究会が全国から参加し、医療訴訟に関する研究報告や医療講演を実施することで研鑽を積む場となっています。
平成27年度は大坂で開催され、1日目は「電子カルテの取り扱い上の問題点」や「治験・臨床研究に関する問題点」、「因果関係に関する実務的課題」について各地の弁護団・研究会から研究報告が行なわれました。
また、2日目は、大阪地方裁判所の医療集中部の元裁判長である大島裁判官から「因果関係の立証をめぐる実務的課題」と題して講演をいただきました。
当研究会からも7名の弁護士がこの全国集会に参加してまいりました。今回の研修ではこの全国集会の参加した久保弁護士、神村弁護士が参加報告を行ないました。
特に因果関係の立証については、患者側で医療訴訟を闘う上では大きな問題となる点であり、この問題についての捉え方は患者側の弁護士と裁判官との間で大きな隔たりが存在します。この全国集会では、その隔たりを埋める意味でも大島裁判官の講演後に質疑応答の時間が設けられましたが、質疑応答を通じてでも埋まらない溝というものがかえって浮き彫りになったことがわかりました。
今回の研修会の中でもこの点について意見交換を行なうことで、改めて因果関係立証の課題について各自が問題意識を新たにする場となりました。
医療訴訟実務協議会
Aの協議会は、札幌地方裁判所の医療集中部と札幌弁護士会所属の患者側弁護士、医療側弁護士が集まり、その都度、医療訴訟上の課題について議論を行ない、札幌地方裁判所における医療訴訟の質を向上させようと定期的に開催しています。
平成27年10月6日の協議会では、医学知見の収集方法のあり方がテーマになっており、ここに参加した大崎弁護士が参加報告を行ないました。
ここでの医学知見というのは、主には協力医による意見書のことを想定しているのですが、患者側弁護士にとっては、この意見書の取得というのが医療訴訟を進める上での大きなハードルとなっています。特に北海道では、医療訴訟に協力する専門医を見つけるのが非常に困難であり、意見書は当然のように取得できるわけではありません。
この協議会の中では患者側がどのようにして協力医の意見書などの医学知見の立証資料を収集しているのかという実態を伝えると共に、裁判所に対しては、そもそも協力医の意見書がなくても病院の責任を認めうる事件はあるのであり、その点は裁判所としてしっかり判断するように強く求めるなどの議論を行ないました。
研修会の中では、この協議会の報告を行なった後に、100%の医学知見を取得することばかりではない現状の中で、どのようにして裁判所に適切な訴訟進行をさせるのか、そのために私たち患者側弁護士としてどのような工夫をすべきであるのかについて議論を行ない、改めて医療訴訟への取り組みを再考する場となりました。
概要
平成27年11月17日午後5時より、札幌市教育文化会館にて「羊水塞栓症」「産科DIC」を中心とした産婦人科の研修会が行われました。
また、「医療事故調査制度」についての紹介もされました。
発表担当者は、高橋智弁護士でした。
研修会では、発表担当者による基本的な産婦人科についての医学知見の解説、関連判例の説明等が行なわれました。
協力医師により、「羊水塞栓症」の発生機序や診断の際の注意点、治療におけるポイント等が解説されました。
ここでの解説はホワイトボードを使った図解も行なわれ、「羊水塞栓症」についての理解を深めました。
羊水塞栓症・産科DIC
羊水塞栓症という病名になじみは少ないかもしれませんが、一旦発生すると母体が死に至ることもある疾病です。
羊水塞栓症は、子宮内圧の上昇、卵膜・子宮内膜の裂傷などの条件が揃った場合、比較的大量の羊水が卵膜の裂隙を通って子宮内膜面に露呈した破綻血管から母体血中に流入し、本性を引き起こすと言われています。
簡単に説明すると、子宮内の胎児由来の成分(胎便や組織因子)が母体血管に入ると、血液の凝固作用が活性化して、体内に微少血栓をつくり、さらにそれを溶かす作用も活性化して、ついには血液を凝固させる材料が消費されて枯渇され、血液がさらさらで固まらないという状況になるわけです。
羊水塞栓症は、心肺停止などを主症状とする「心肺虚脱型」と、凝固しない性器出血などの出血を主症状とする「DIC」先行型の大きく二つに分かれていますが、混合型もあります。
いずれにせよ羊水塞栓症が一旦発生すると、一大事ということになります。
確定診断には、母子の血液検査が必要ですが、時間がかかります。それゆえ、臨床症状からいかに素早く羊水塞栓症の発症を発症を察知し、対処療法をとるかが大切になります。
医療事故調査制度
平成27年10月1日からスタートした「医療事故調査制度」についての解説も行なわれ、同制度スタート後の相談業務における注意点など実務的に有益な情報提供が行なわれました。
この制度の調査対象となる医療事故は、「医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの)」とされています。
この事例であると病院側が認定した場合には、医療機関は、遺族に説明を行い、医療事故調査・支援センターに報告します。その後、速やかに院内事故調査が行われます。医療事故調査を行う際には、医療機関は医療事故調査等支援団体に対し、医療事故調査を行うために必要な支援を求めるものとするとされており、原則として外部の医療の専門家の支援を受けながら調査が行われます。
院内事故調査の終了後、病院は、調査結果を遺族に説明し、医療事故調査・支援センターにも報告します。また、医療機関が「医療事故」として医療事故調査・支援センターに報告した事案について、遺族又は医療機関が医療事故調査・支援センターに調査を依頼した時は、医療事故調査・支援センターが調査を行うことができるとされています。
そして、調査終了後、医療事故調査・支援センターは、調査結果を医療機関と遺族に報告することになります。
なお、この制度は10月1日以降の死亡・死産事例ですので、それ以前の事故は対象とされていません。
本制度で、重要なポイントなのは、調査対象とされるかどうかについて病院側に判断権があり、患者側にはないということです。ですから、患者側としては、死因が不明と思われるときには、病院側にこの制度の対象となると思われる場合には、病院側に働きかけをするという必要が出てくると思います。
また、ある疾病から死亡という結果も予想される場合には、そこに過失が介在していても、事故調査の対象事故とはならないということです。この点、誤解をしてはいけないと思います。その意味では、調査対象は限定的なものになります。
院内調査調査がスタートすれば、これとは別に、医療事故調査・支援センターに調査を依頼することも可能となるというのも重要だと思います。
院内調査は第三者の医師らが関与して行われますので、そこでどれだけ公平性が担保されるのか、病院側の事情を配慮したものになってしまわないかということも問題でしょう。